東京日記(1)
2泊3日研修出張
---1日目(前編)---


 実のところ私の仕事は、そう何度も出張がある種類のものではない。しかしなぜか、2泊3日で東京に、一人で出張することになってしまった。

 普通のサラリーマンなら日常茶飯事、何でもないことだけど、大騒ぎで行ってきました。


 研修は7月26日から2日間なのだが、受付開始が午前9時のため、当日向かっていたのでは間に合わない。そこで、前泊の許可をもらえた。日曜日にのんびり出発&自由行動だ。ラッキー。

 しかし、7月に入ってから突然降ってわいたような話で、私は大慌てで宿を手配することに。
 研修の会場が上野だったので、その周辺で安いところを・・・と「じゃらん」で検索していると、ちょうど上野に「水月ホテル 鴎外荘」というところを発見した。ホテルの中庭に、森鴎外の旧居があるという変わり種の宿だ。しかも、東京都内で温泉に入れるホテル。なんか、おもしろそー。しかも、素泊まり7,200円。安い。決まりだ。


2004年7月25日(日)

 朝8時前に和歌山の最寄り駅を出発、上野に到着したのは12時半頃だった。

 上野駅のすぐ近くにある店で適当に昼食を済ませ、上野公園へ。まずは国立西洋美術館で特別展「聖杯-中世の金工美術」を見学、それから西洋美術の系譜が総覧できる常設展示を鑑賞した。中でもロダンの彫刻は非常に充実しており、静かな空間で過ごす、文化的なひとときを楽しんだ。

 ・・・とか書いたらカッコいいんだろうけど、私は今までもこれからもきっと、聖杯や中世の金工美術にはまったく興味がないと思われる。つまるところ、全然面白くなかったのであった。
 常設展示も最初の方は、ルネッサンス以前のイタリアの宗教画が延々と続き、あまりの濃厚さに気分が悪くなってきた。ていうか、フランドル絵画もネーデルランド絵画もあんまり興味ない。私が興味あるのって結局、印象派から20世紀初頭ぐらいまでの、約100年間くらいなんだよね・・・。見て回るだけでクタクタになった。

 実はけっこう面白かったのは「建物」の方で、この美術館の本館はル・コルビュジエという有名な建築家(→この建物の写真とかが有名)が設計したものである。その経緯についての展示が興味深かった。
 あと、建物の前庭にロダンをはじめとする6基の彫刻が屋外展示されているのだが、そのうち3基には免震(耐震ではない)のための特殊な装置が設置されている。その装置を展示しているコーナーがあって、ボタンを押すとミニチュアサイズの「考える人」がガタガタ揺れて、免震装置の仕組みを知ることができる。揺れまくる「考える人」の前でひとりたたずむ私が、視線を感じてはっと見ると、傍らに4歳くらいの男の子がいて、興味津々の様子だった。
 ごめんね〜〜、これ、止まらないと次の人は押せないのよ〜、羨ましいだろ〜〜。

 ・・・・ちょっと空しくなってきた。


 さて、なんだかんだと文句を言いながらも1時間半くらい楽しんで、次は、今回最も重要な目的地である、上野動物園へと向かった。
 そう、私はサンディエゴ動物園のパンダ中継を見て以来、突然パンダの愛らしさに目覚め、ここ1年くらい「パンダ狂」と化していたのである。4月にはパンダを見るためだけに白浜アドベンチャーワールドに行ったくらいだ。だから、入場料600円でパンダしか見なくても、惜しくないことよ。

 ほんとに「パンダだけでいいや」、と思い、パンダ舎の前でかなり長いことウロウロしていた。カップルや学生グループや家族連れに混じって、写真を撮りまくる私。
 すると、パンダ舎の前に、先ほどからずっといる女性の存在に気付いた。おそらく三十代前半、同じくらいの年頃かも。もしや、この人も・・・パンダフリーク?
 しかし、黒髪ストレートのおかっぱ、小さなリュックサック、フレアスカートに短い白ソックスをはいたその人は、何か「やばい」雰囲気を醸し出していた。私はここで初めて、パンダにハマっている我が身を客観的に省みていたたまれなくなり、思わずその場を立ち去ったのだった。

 で、売店でパンダのぬいぐるみを買い込み(懲りてない)、近くにあった「日本の鳥」館やらを見て回る。小鳥さんたちはけっこうかわいい。近くにはサルの檻があり、クモザルの子どもがいた。クモザルは手足がやたら細長くて気持ち悪いのであまり好きではないのだが、クモザルの子どもはおそろしくかわいかった。

 それから、なぜか動物園の中に五重塔があるということで、それも見物に行った。幸田露伴が小説に書いた「五重塔」かと思っていたが、説明文を読んでもそんなことは一切書かれておらず、どうやら違ったらしい。 重要文化財のはずの五重塔の周囲には、たくさんのツルとカモが我が物顔で暮らしていて、日常の中の風景とは思えない。ひとり旅の「なんかわけわからん感」がたまらなかった。

 地図を見ていただければ分かると思うが、私が行ったのは右下の、ごく一部だけだ。
 「パンダさえ見られれば十分」っていうのもあったが、ひとりだとさすがに、全部回ろうっていう気にはならなかったのである。夏の動物園なんて、暑いし臭いし動物は弱っているし、決して快適な遊び場とは言えない。


 ジャイアントパンダの隣の檻には、2004年の時点ではまったく注目されていなかったレッサーパンダがいた。
 黒山の人だかりとなっている、上野動物園のアイドル・ジャイアントパンダの隣に並べられ、「ええねん、ええねん。ワシはこれが気楽やねん。飯食うとるとこまで客に見られたら、落ち着かんわ。」という様子でリンゴを食べていた。

 あまりに気の毒だったので1枚撮影しておいた。「同情なんか結構。」と言われたとか言われなかったとか。

ジャイアントパンダのシュアンシュアン(♀)
「はあ〜、ごくらくごくらく。」

今回のベストショット。
(ここには実は、水もお湯も入ってません。)

 もう一度パンダ舎に戻ると、例の「パンダフリークの人」がまだいて、少々げんなりした。
 4時頃、動物園を後にする。

(2005. 8.12)


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