吸入療法について(これは2000年にラジオ大阪で放送された原稿の一部です)
なぜ吸入療法が有効か
吸入療法の意義は薬剤が直接肺に到達することによって、薬剤が効率よく作用して副作用を少なくすることにあります。例えば口から飲む薬の場合は腸から吸収されて血液に溶けてから、さらに全身に廻って肺の組織に到達した分量が有効に作用しますので大変効率が悪いわけです。この場合は吸入療法に比べてより大量に薬を飲まないと効果がないのでその分副作用も増えます。ですから今では吸入療法が喘息治療の主流になってきています。吸入療法が非常に有効であるので、日本アレルギー学会の気管支喘息治療ガイドラインの中にも吸入療法が取り入れられています。
ポケットネブライザーについて
吸入療法に使用する器具には大きく分けて2種類あります。一つはMDIというものです。別名ポケットネブライザーともいってポケットに入る位の大きさで、手で押せば薬が噴霧されるようになっています。大変便利なものですが吸入方法に若干難しい点があります。噴霧される薬は押したときに一瞬の間に出てしまいますのでその時にうまく呼吸を合わせて吸入しなければなりません。その為に乳幼児や老人ではうまくできません。せっかく良い薬を使用してもうまく出来なければ何もなりません。吸入補助器具(スペーサー)は直接ポケットネブライザーが巧くできない人でも出来るように工夫されています。たくさんの種類のスペーサーが考えられていますので現在ではどんな人でもポケットネブライザーを巧く使用することが出来ます。また年長児や大人の人でも自分ではポケットネブライザーが巧く出来ていると思っていても実際は吸入した薬の6.5-11.2%しか肺に到達しませんが、スペーサーを使用する事によって14.8%にまで改善します。ここでもう一つ問題があります。このスペーサーを医師に指示された通りに使用していないことがよくあります。本人は巧くやっているつもりなのですが....。それを防ぐためには主治医または看護婦さん、あるいは薬剤師さんに自分のやり方で正しいかをチェックしてもらうことが大切です。私の医院での調査でもチェックを頻繁にするほど正しく出来るようになっています。
電動式ネブライザーについて
もう一つの吸入療法に使用する器具は電動式ネブライザーと言われるものです。これは医師から処方された吸入の薬を器具の中に入れて加圧された空気の噴出によって液体の薬を霧状にして人の肺に噴霧するものです。また振動によって薬を噴霧するタイプのものもあります。子どもの喘息治療ではこの電動式ネブライザーによる治療が重要な位置を占めています。但しここで注意していただきたいことがあります。この電動式ネブライザーはよく薬局とか電気店で販売されているネブライザーとは全く異なるものです。医療機関でしか取り扱っていません。さて西川氏によって始められたインタールとベネトリンの吸入療法はこの電動式ネブライザーを使用します。この治療は画期的な治療で抗アレルギー薬であるインタールと気管支拡張剤であるベネトリンを一緒に吸入するのですが、この治療が導入されて以後小児喘息で入院する患者が激減しています。しかしこのときに使用する電動式ネブライザーの機種間で若干吸入効果の差があります。私が検討したところでは、やはり最近発売されたものの方がより吸入効果があるようです。インタールとベネトリンの吸入療法は発作の予防とともに発作時にも効果あります。さらに電動式ネブライザーを使用することによってポケットネブライザーのような煩雑な吸入方法が必要でないためにどんな乳幼児でも使用が可能です。またポケットネブライザーとスペーサーを使用するときよりもさらに簡単です。
吸入療法の注意点
ネブライザーで使用する薬には主として気管支拡張剤と吸入ステロイド剤があります。発売当初は気管支拡張剤のみ発売されていました。気管支拡張剤は即効性があるために患者さんはつい使いすぎの傾向が強くなり却って死亡率が高くなった時期があります。気管支拡張剤はあくまでも発作の起こっている状態を一時的に切り抜けるために使用するのであって、喘息患者さんの気管支に起こっている炎症をほとんど押さえません。気管支拡張剤ばかり使用していると、ただでさえ敏感な気管支喘息の気管支をますます過敏にしてしまいますから慢性の喘息患者は必ず炎症を抑えるインタールまたはステロイドの吸入を併用すべきです。喘息発作時に気管支拡張剤を連続2−3回吸入しても改善されないか却って悪化する場合があります。この場合は直ちに医療機関を受診することが大切です。他に注意すべきこととして喘息発作はいつ起こるか解りませんので外出・旅行するときは必ずネブライザーを持参しましょう。
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