ピークフローメーターとは

 肺機能は病院か研究室でしか測定できなかったが、WrightMcKerrow1959年に家庭でも簡単に測定できるピークフローメーターを発表した。これはマウスピースから空気を吹いて羽板を回転させて最高値になったところで、逆転防止用の歯止め装置で止めてその値を読む簡単な装置であった。この時に測定される呼気流量は最大呼気流量(peak expiratory flow rate 略してPEFR)と呼ばれる。一般にはリットル/分 で表される。この値に影響するのは、最大の呼気を出そうとする努力、呼気筋の収縮、肺と胸壁の反跳力、中枢気道(末梢の気管支でなく比較的太い気管支)の抵抗である。

 

    何故ピークフローメーターは有用なのか

患者は勿論、医師にとっても客観的に症状を把握できる。自覚症状、理学的所見だけでは肺機能の低下を見過ごすことが多い69。患者が呼吸困難を訴えないからと言っても肺機能が正常でないことが度々観察経験される。一見正常に思える患者が突然大発作を起こす場合は普段のピークフローが低下していることが多い。聴診器でラ音が聴取されなくても、肺機能が落ちていることがあるので聴診器を過信してはいけない。ポータブルのピークフローメーターの値はスパイロで測定出来る値に比して約3%値が高くでると報告されている。しかしこの3%は臨床的には問題とならない値である13ので、基本的にはほぼ同じと考えて良い。

・気道閉塞程度の日内変動、経日変動が解る。

・悪化の早期把握が可能になる。

     測定が極めて容易であるので患者自身が自分の状態を把握でき自己管理が出来る1

     安価である。チェスト社では一ヶ約1900円で手に入り、条件付きではあるが健康保険の適用にもなっている。そのため以前に較べて患者さんに勧めやすい。

                        

 

    測定方法

原則的に立位で行う(立位になれない場合はその姿勢を記録する)。ノースクリップは必要ない。胸いっぱいに息を吸い込み、次に短時間に最大限の力で呼出する。(WHO マウスピースをしっかりくわえる。口を窄めて吹いてはいけない。一日2回、また気管支拡張剤を使用している場合は投与前と投与後に測定するのが望ましい。

 

小児の場合でも小児用ピークフローメーターを使用する必要なし4)

  一般的にローレンジの機種は、測定可能な範囲では、スタンダードレンジの機種より優れていることが期待されるが、実際には精度、再現性、機種間変動性の点で劣っており、目盛りの読みやすさ以外にメリットはない。機種間では若干の測定値のばらつきがあるために56、機種の異なる測定値は単純に比較できないの出来るだけ同一の機種を使用するのが望ましい。

 

どのような値の時に注意すべきか

 自己最高値が予測値の80%未満である場合、あるいは気管支拡張剤投与後の日内変動値が20%を越える場合にはさらに治療レベルを高める必要がある68。気道過敏性とピークフローの日内変動と相関関係がないとする報告もある78が、あるとの報告ある91098。加野らは、急性憎悪した群についてその2週間前のピークフローの日内変動を症状が安定している時の2週間と比較すると有意に変動値が大きかったと報告している11)

 

    予測値・自己最高値とは

予測値は隅田、西間、荒井など数種の予測式があるが、本邦では西間の予測式がよく用いられているが%ピークフローが高くでる傾向にあるために、同一患者で成人になって他の予測式に変換すると突然異常値になってしまうという不都合が生じている。

自己最高値は内科領域では喘息管理の国際指標GINAによるとプレドニゾロン0.51mg/日 14日間の投与後のピクフロー値が勧められている3が、小児には適用できない。小児では2〜3週間のピークフローを求めて、その日内変動が2030%以内のときは最高値を自己最良値とし、2030%以下のときはβ2刺激剤吸入後の値と日記の最高値のより高い方を自己最良値にする。

 

    ピークフローメーターの限界

小児では無発作時には重症度に関係なくピークフロー値が正常値であることが多く62)、細かな肺機能・状態を知るにflow volume curve が必要である。外来診療で喘息患者の経過を診る場合必ずflow volume curveをチェックする必要がある。特に抹消変化を示すV25,V50で異常値を示すことが多い。パルスオキシメーターとの関係では、12歳以下でパルスオキシメーター値(sPO2)とピークフローが相関する。しかし13歳以上では非発作時の肺機能が閉塞性変化の強い症例ほど解離する例が多く、両方でモニターする必要がある2)。重症発作時にはピークフローでは対応できないし、かえって発作を助長することさえある。パルスオキシメーターで対応すべきである。最近小児でのピークフロー日記は信頼出来ないので、電子ピークフローメーターを使用すべきであるとの意見がある14

 

ピークフローメーターは小学生以上の小児は出来るだけ使用すべきである。著者のクリニックでも出来るだけ持たせて記録するよう指導している。しかし約3分の1の患児は記録を続けていない。現在測定していない理由は(図1)
ア 発作が全くないので、記録しても意味がない
イ 発作があるが、記入するのが面倒だ
ウ 発作があるが、記入する意味がよく分からない
エ 記入するのを忘れる 

 

が主な理由であった。ピークフローの意味を繰り返して説明する必要がある。

 

ピークフローの手入れ

 マウスピースは毎日洗う方がよい。本体は1週間に1回、最低1月に1回、食器用洗剤に30分間浸し、水ですすぎ、水滴をよく振り切り自然乾燥させる。熱湯は本体を変形させるおそれがある。一年以上洗わなかった場合は精度が落ちてくる12

                             

1) 山本崇晴、青木幸、大場悟、平田義章:小児気管支喘息児の自己最高ピークフロー値. 小児科臨床 50,1983-1990,1997

2) 加野草平、西間三馨:小児気管支喘息患者における急性発作時のピークフロー(PFR)とパルスオキシメーターによる酸素飽和度(SpO2)との関係についての検討. アレルギー 46,1265-1272,1997  

3) Global initiative for asthma, Global strategy for asthma management and prevention, NHLBI/WHO workshop report, NIH, NHLBI, 95-3659,1995

4) 高増哲也、栗原和幸:各種ピークフローメターの精度とピークフローの小児の予測値, 日本臨床 54, 2933-2938, 1996

5) 小幡俊彦:

6) Koyama H, Nishikawa K, Ikeda A, Tsukino M, Izumi T: Comparison of four types of portable peak flow meters(Mini-Wright, Assess, Pulmo-graph and Wright Pocket meters). Respiratory Medicine 92,505-511,1998

7) 大久保隆男:肺機能検査としてのピークフロー. Terapeutic research 14:3031-3038,1993.

8) 前田晃男:気管支喘息患者におけるピークフロー値と気道過敏性との相関についての検討. アレルギの臨床 15797-7991995

9) Ryan, G., et al.: Bronchial responsiveness to histamine :relationship to diurnal variation of peak flow rate, improvement after bronchodilator, and airway caliber. Thorax 37 :4277-429, 1982

10) 五藤和子、栗原和幸 他:ピクーフロー値の変動と気道過敏性                                    

との関係. 気管支ぜん息に対する各種療法、憎悪回避策に関する研究報告書、公害健康被害補償予防協会委託業務報告書、57-61,1995   

98) Quackenboss J J, Lebowitz M D, Krzyzanowski M:

The Normal Range of Diurnal Changes in Peak Expiratory Flow Rates Relationship to Symptoms and Respiratory Disease. Am REV RESPIR DIS, 143:323-330,1991    

11)加野草平、西間三馨 他:小児気管支喘息患者におけるPFRモニタリングの有用性. 日小ア誌12,41-49,1998.

12)高増哲也 他:気管支喘息患者が使用中のピークフローメーターについての検討. 気管支喘息に対する各種療法、憎悪回避策に対する研究報告書、公害健康被害補償予防協会委託業務報告書、31-36,1995

13Wensley, D. Pickering, D. Silverman, M : Can peak expiratory flow be measured accurately during a forced vital capacity manoeuvre? 16, 673-676,2000

14 Kamps A W A, Roorda R J, Brand P L P  Peak flow diaries in childhood asthma are unreliable.  Thorax  2001;56:180-2

 

 

 

 

 



 

図1  現在測定していない理由は

   ア 発作が全くないので、記録しても意味がない
   イ 発作があるが、記入するのが面倒だ
   ウ 発作があるが、記入する意味がよく分からない
  エ 記入するのを忘れる









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