日刊静岡 2009年6月27日




日章旗が戦地から帰還 御殿場の木下さんの元へ

 
 フィリピンで終戦を迎えた元陸軍兵の木下伊三男さん(87)=御殿場市ぐみ沢=の元に26日、戦地に残した日章旗が戻ってきた。木下さんは「あのころのことがはっきり頭によみがえる」と感慨深い表情を浮かべた。

 東京都内で銀行員をしていた木下さんは1944年2月に入隊。同じ年の8月に激戦地のフィリピン・ミンダナオ島に向かった。日章旗は出征前、父親をはじめ御殿場市や長泉町にいた親類ら53人がそれぞれ自身の氏名を寄せ書きしたといい、木下さんは戦地で持ち歩いた。

 終戦後の45年9月、木下さんは米軍に投降するため、いかだで川を下ったが、激流の中で荷物を持ち続けることができず、病人の仲間とともに日章旗を陸地に残した。

 60年余りが経過した1昨年、この旗を現地で拾った元米兵が「持ち主に返したい」と同国在住の日本人に依頼。厚生労働省が、日章旗に記された「木下伊三男君」の文字を頼りに調べていた。

 御殿場市役所で26日に県職員から日章旗を受け取った木下さんは「拾った方のご厚意のおかげ。かつて戦った相手だが、できることなら恩讐(おんしゅう)を超えて抱き合いたい」と話した。

【2009年6月27日 毎日新聞静岡版】